お客様相談室

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描線が乾かない・浮き出る 《内装材の事例・サインペン》

壁紙やマット、カーペット、Pタイル、長尺シートなどの内装材で「インクがいつまでも乾かない」「何年も経過してから、下地に書いたインクが、内装材を通って浮き出てきた」という事例を伺っています。現物を確認してないため推測となりますが、発生の原理と適したペンを記します。
 

a)可塑剤が原因の場合

原理

プラスチック製の消しゴムが、鉛筆の軸の塗装に長時間触れると、消しゴムと鉛筆が貼りついたり、塗装が消しゴムに移ったりすることがあります。これは、消しゴムに含まれた樹脂を柔らかくする「可塑剤」(蒸発しにくい溶剤)が、時間の経過とともに塗装へ移り、溶かすためです。プラスチック消しゴムには、紙などのケースが付属しているのは、この発生を防ぐためです。
※参考:「消しゴムに鉛筆がくっつく

内装材の多くには、上の消しゴム同様「可塑剤」を多く含んだ「軟質の塩化ビニール樹脂」(軟質塩ビ)が、使われています。そのため、「内装材がインクに触れる」状況が長時間続くと、「消しゴムが鉛筆の軸に触れる」現象と同様に、可塑剤がインクを溶かしていきます。

1) 描線が乾かない理由
※画像はクリックで大きくなります。(別画面)

上の写真は、市販の軟質塩ビ製のマットに筆記し、3日後に綿棒で描線の上を擦ったものです。

筆記した文字と製品は、次のとおりです。
 PC:ポスカ PC-5M 水性顔料インク
 P2:ペイントマーカー PX-20 油性(白:顔料、赤:染料)インク
 P3:ペイントマーカー PX-30 油性顔料インク

油性インクのペイントマーカー(P2、P3)が乾かないのは、マットに含まれる可塑剤が、インクへ移って溶かした(一度乾燥してから再び溶けた)ためです。

2) 描線が浮き出る理由
※画像はクリックで大きくなります。(別画面)

上の写真は、アルミ板の上にサインペンで筆記し、乾いた状態を確認してから、市販の軟質塩ビ製のマットを密着させ、再度3日後にマットをアルミ板から離した状態です。

筆記した文字と製品は、次のとおりです。
 PC:ポスカ PC-5M 水性顔料インク
 P2:ペイントマーカー PX-20 油性(白:顔料、赤:染料)インク
 P3:ペイントマーカー PX-30 油性顔料インク

乾いた描線への反応ですが、1)同様に油性のペイントマーカーでは、マットの可塑剤がアルミ板のインクへ移り、再び溶けたインクがマットに付着しています。3日でこの状況のため、数年も密着した状態が続くと、可塑剤はシートの中をインクに向かい続け、インクとシートが一体となるように変質することが考えられます。この変質が「下地に書いたインクが、マットの中から浮き出てきた」現象になると推測します。

補足

可塑剤は様々なプラスチックやゴム製品に含まれます。その中でも、軟質塩ビは可塑剤の含有率が高いため、この現象が目立って生じます。また、この現象は含有率の他に、時間や温度などで異なります。

可塑剤についての詳細は、「可塑剤工業会のHP」に掲載されている資料をご覧ください。各種出版物をpdfで閲覧できます。

適したペン

一般的な軟質塩ビ製品への筆記であれば、上の事例のように可塑剤が溶けだしにくく、濃色の上でも鮮やかに発色する「ポスカ」などの水性顔料インクが適していると考えます。なお、素材との相性は、これまでの見識によるものです。他の添加剤などが影響を及ぼす場合もあるため、インクとの相性をあらかじめ確認してからご利用ください。

油性ペイントマーカーは溶剤にキシレンを使用しているため、このキシレンに軟質塩ビ製品が溶け、可塑剤のインクへの溶け出しも多くなっています。キシレンを使用しない油性マーカーでも程度の差はありますが、温度や期間によって、この現象は発生します。
 

b.接着剤や粘着剤が原因の場合

原理

インクの主な成分は溶剤と着色剤(色素)で、この組み合わせで性質が異なります。詳細はこちらをご覧ください。染料インクを落とす際は、インクと同じ性質の溶剤で溶かし、他の布で移し取ります。このインク落しと同じように、接着剤や粘着剤に反応したインクが溶け出し、貼りあわせた内装材からインクが透けて見えたと推測します。

適したペン

着色剤は、染料よりも溶け出しにくい顔料インクが、また、水性の接着剤ならば油性のペンのように、接着剤や粘着剤と異なる溶剤のインクが適していると考えます。しかし、溶解力の強い接着剤や粘着剤に触れれば、顔料インクでも溶け出す場合が考えられますので、インクとの相性をあらかじめ確認してからご利用ください。

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